エルクのハイブリッドアンプ Vesser V30 です。1979年ごろの製品のようです。

この機種を取り扱うのは2度目になります。
記録を見ると前回は 2010年6月なのでもう12年も前になります。
当時は真空管アンプだったらなんでも良いから修理してみたい、
という欲求に駆られてオークションで入手、修理して満足していました。
回路図も部分的に残していますが、半導体プリアンプが
ディスクリート回路なので気力が足りずに頓挫したのを覚えています。
JFET 2SK30A が使われているのですが、ソースとドレインが
逆に接続されているのを目にして混乱したのも覚えています。
そんな使い方をしても問題がないということを頭では理解していましたが、
実際の製品の中で使われていると何か意図があるんではと考え込んでしまいます。
その後、同じVesser シリーズの V60 を解析してやはり 2SK30A が
同じ接続になっていること、Guyatone のアンプでも同じことが度々見られること
などから、慣れてしまいましたが。そんな時代だったんだね。

で、今回は12年ぶりの V30 再チャレンジです。
いつかは回路図をコンプリートしようと随分前からオークションに出品
されるのを見ていましたが、今回やっと入手できました。
すでに昨日回路図を作成して公開。やっとリベンジを果たしたわけです。

前面。
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当時、国産アンプは Mesa/Boogie に似せたルックスが大流行りでした。
"Vesser" という造語の名前も Mesa に似せているのでしょう。
入力ジャックは1と2。VOLUME1, VOLUME2, MASTER のスリーボリューム。
VOLUME1 は入力1専用です。
トーンコントロールは BASS, MIDDLE, TREBLE。あとREVERB も
装備しています。
歪みはスリーボリュームの加減で作るタイプで、回路的にも
ダイオードクリップなどの人為的に歪みを作る部分はありません。
Vesser V60 だとダイオードクリップが導入されているのですが
V30 は(回路パターンはあるのですが)省かれています。

背面。
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左からサービスアウトレット(MAX 300W), ヒューズ 2A,  外部スピーカージャック、
LINE OUT, HEAD PHONE, REVERB FOOTSW とジャックが並びます。
スピーカーは 12 インチ 8 Ω の L-301 というもの。
音が出ることは確認しましたが、コーン紙が大きく破れているので
スピーカー交換は必須のようです。

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背面パネルを外すと真空管や変圧器が見えます。
底にリバーブも配置されていますが、なんか扱いが雑なような。

出力管は 松下の 7189。6BQ5 (EL84) の改良版でプレート電圧 400V まで
使えます。EL84 で代替できないのがちょっと難点。

全体的に汚れも少なく、修理や改造などの手が入っていない個体のようです。

キャビネットからシャーシを取り出して見ます。
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真空管は位相反転段の 12AX7 (松下) と 7189 x 2。
左が電源トランス、中程にあるのがリバーブトランス、右にあるのが出力
トランス。

7189 のアップ。
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松下製ですね。この白いマーキングは触ると消えてしまうので注意。
作業中は破損防止のためこれらの真空管は外しておきます。

シャーシ内部。
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エルク独自のシールド材「銀紙」です。これでシールドの効果があるのか
疑問ですが、これまで扱ったエルクの複数のアンプにこれがつけられていました。

取り外すとプリアンプ部の基板が現れます。
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