すでに回路図を見た方はお気づきのことと思いますが、この JC-120U の
回路は奇妙な点があります。
CH2 のプリアンプ部の回路図を示します。
何が奇妙かといえば、使用している抵抗の仮数部が "68" に偏っている
ということ。つまり、680Ω、6.8kΩ、68kΩ、680kΩ が使われている
頻度がとても高いということです。
抵抗だけでなく、フィルムコンデンサも 0.068uF や 6800pF が頻繁に
使われています。
JK BOARD
また電解コンデンサもいろいろな役割で使われているにも
関わらず 4.7uF 63V が大半(JK Board で顕著)。パワーアンプ部なら
電源電圧も高いので63V のものを使うのは間違いではないのですが、
せいぜい 30V 程度の電圧回路に使うのは疑問があります。
この回路の設計者が "6" のつく部品にこだわっているのではないかと
思えるくらい。
実はこの傾向は JC-20 では特に顕著で、 JC-20 の回路を採取した
ときには驚いたと同時に何かの冗談かとも思ったものです。
なので JC-20 の回路ではこのことについて特にコメントしなかった
のですが、JC-120 にまで同様な回路構成が採用されているとなると
もはや冗談とも言ってられません。
もっとも JC-20 では何が何でも 68 を使うんだという意志が感じられる
部分(100kΩ 一本で済むところを 68kΩ 3本で代用してたり)も
あったものですが、JC-120U ではそのような強引な部分はなく、
15 や 33 などの値も散見されます。
もちろん、電子回路の定数については必ずしも絶対値が重要という
わけではありません。どちらかといえば複数の部品の比率が重要で
あることの方が多いです。たとえば電源電圧の 1/2 の電圧を作るので
あれば同じ値の抵抗を2つ用意して直列に接続し、一端を電源電圧、
もう一端を GND に接続します。2つの抵抗を接続した部分に 1/2 の
電圧が生じるわけですが、この場合に同じ値の抵抗として 10kΩ を
選ぶか、6.8kΩ を選ぶかの違いなだけ、とも言えます。
比率を計算する際に分母にあたる定数(抵抗値など)を 10 や 100
などの切りのよい数を使うとわかりやすいので使われがちですが、
比率さえ合っていれば6.8 や 68 を使ってもよいわけです。
厳密にはある程度の違い(流れる電流の大きさなど)が生じるのは
確かなのですが、こと音量や音質の面においては(比率を同じにして)
抵抗値を変えても「ほとんど変わらない」という印象になるはずです。
今回の JC-120U は回路図を採取するためのみにオーナー氏から
お借りしているので本BLOG に掲載している大部分のアンプと違って
メンテナンス作業を行いません。
なので今回は電解コンデンサの交換しなくてよいのですが、
比較的入手が難しく割高な 63V のものを大量に交換しなければ
ならないとなると躊躇してしまいます。
なぜこのような定数の部品を使うのか、必要性がわかりません。
68 のつく抵抗やコンデンサが大変安価に大量に入荷できたから、
などという単純な理由ではなさそうです。